注釈

註1-ボノボ

かってピグミーチンパンジーと呼ばれ、やや小型のチンパンジーとされていたが、今は違う種として扱われ名称もボノボと呼ばれる。チンパンジーと同じパン族。

およそ230万年前、チンパンジーと分岐した。
チンパンジーがアフリカの西海岸から東部のタンザニアまで広く分布するのに対し、ボノボが生息するのはコンゴ川(ザイール川)の南側だけ。おそらくこのアフリカ第二の大河によって地理的隔離がなされ、2種に分岐したのだろう。

旺盛で多彩な性行動で知られる。この旺盛な性行動は個体同士の緊張を緩和するのに使われているらしい。
知能はチンパンジーに勝ると見られ、頻繁に2足歩行も見られる。
スー・サベージ・ランボー博士による、「天才ボノボ」カンジ、パンバニーシャなどの言語訓練研究が有名。

註2-塩基配列分析と、ヒト、チンプの分岐年代等

チンプ・ボノボとヒトが、共通の祖先種から分岐した年代は、分子生物学の知見を最初に人間に適用した、ヴィンセント・サリッチとアラン・ウィルソンによって、最初480万年前、或いは500万年前とされて来ました。
その後、チャールズ・シブリー、及びジョン・アールクヴィストによる、DNA交雑法を使っての別個の測定、及び分子生物学の更なる発展等により,タンパク 質やゲノム分析の技術が向上し,分子時計による人類進化の道筋の推定がより正確なものとなって、今では100万年ほど遡った、およそ600万年前と主張さ れるようになっているようです。

しかし最近、古い地層からの猿人化石の発掘が相次ぎ、この分岐年代さえも見直しが余儀なくされているようです。
特に、2000年発見のオロリン・ツゲネンシス(600万年前)、2001年に発見された、サヘラントロプス・チャデンシス(愛称 トゥーマイ、600?700万年前)の意義は大きく、今では更に100万年も遡った700万年前辺りを分岐年代として視野に入れる必要にせまられているよ うです。
しかもオロリンにしてもトゥーマイにしても、発見された化石には既に直立二足歩行の痕跡が見られる訳で、ヒトはチンプなどと分岐して殆ど間を置かずにこの、直立二足歩行を獲得したことになります。と言うか直立二足歩行したからヒトとして分類されている訳ですが。

この600万年とか700万年とかの古さが逆に、オロリンやトゥーマイの化石を、ヒトに分類すべきか否かについて、一部論争になっている模様です。
私としてはトゥーマイ頭蓋骨化石にハッキリ認められる、直立二足歩行の特徴からしても、これをヒトとして認めるに些かの疑問も無いのですが、この決着は新 たな化石の発見や専門の研究成果に委ねるとして、いずれにしても700万年前程以前には、ヒトとチンプやボノボが同じ動物であったことは間違いないところ です。
そして1000万年余り遡った過去には、ゴリラとも又祖先を同じくしていたのでしょう。

遺伝的差異は研究手法によって若干の差が出てきます。又、比較する分子によっても結果は違います。
同時に次のような事情も留意しておいた方が良いでしょう。

ヒトとチンプの遺伝的多様性の検証に、最初に分子を持ち込んだのは、バークレー校のアラン・ウィルソンとヴィンセント・サリッチだが、当時、つまり 1960年代半ばには未だDNA分子の直接分析は出来なかったので、彼らはDNAの代わりにタンパク質分子を利用しました。タンパク質はDNAの塩基配列 によってコードされているアミノ酸が繋がったものだから、タンパク質の比較はそのままDNAの比較に繋がる。

しかしこの分析手法で問題にされるのは、タンパク質合成に関与しているDNAだけだと言うことです。
人間(チンプやゴリラも)のDNAにはタンパク質合成に関わる、エクソンと呼ばれる領域のほか、タンパク質合成に関わらず何の働きもしないとされて、 「ジャンクDNA」と呼ばれることもあるイントロン領域が、エクソンの何倍も有ることが分かっている(最近の研究で、このイントロンにも何らかの存在意義 が有るのではないかとされてはいるが)。

そしてこのイントロン領域は、生存に有利にも不利にも働かない為、突然変異が淘汰に掛からずそのまま定着する率が高い。つまりは変異スピードが極めて速い。
タンパク質の比較だけでは、このイントロン部分の変異が考慮されないことになる。
イントロンを含めたDNA全体の変異は、従ってもっと多くカウントされることになる筈だ、と言う訳だ。それがどの程度の意味を持つか、私には分からないが。

もう一つ、
DNA分子の比較と言う点で、任意の二つの種、例えば人間とナメクジ、或いは人間と大腸菌で対応するDNAの塩基配列を比べたとき、どんなにかけ離れてもその差異が75%以上になることは無いと言うことである。
例えば、ヒトと大腸菌のシトクロムc(チトクロームc)に関わるDNAを比較したとき、最低でも25%以上の共通点を持っていると言うことだ。それは同じ共通の祖先に由来する、全ての生物の土台と言うことだろう。

だからと言って、人間が25%大腸菌的だということではないし、25%ナメクジの性質を持っていると言うことではない。
ヒトとチンプ、或いはゴリラの遺伝子的差異を考える際にも、その辺の「共通の土台」を留意しつつ数字を見てゆくことも必要だろう。