No-2 オスとメス、男と女

NEXT(性の起源、目的)

人間以外にも、多様な性がある

■ ホヤ

軽い話題から入りましょう。
皆さん、ホヤって知っていますか。そうです、三陸から北海道にかけての海で主に獲れる、ピンクがかった茶色のぶよぶよした様な生き物です。
電球とか、ランプのガラスの部分のことを、ホヤと言いますが、形が丸く似ているので、ホヤと 言うんだそうです。 でも、じゃランプが無かった頃はなんて言っていたんだろう。
海のパイナップルとも呼ばれて、栄養も有るとの事です。 夏が旬で、ぷっくり膨れ中身も充実して来ます。
ホヤ貝と呼ばれることも有るので、貝の仲間かと思っている人も居ますが、 原索動物と言う分類なんだそうで、実は、脊椎動物の直系に近い動物です。つまり我々人間の、遠いご先祖様になる訳ですね。お彼岸やお盆には、ご先祖を偲び、ホヤの為に お線香でも上げましょう。

ところで、このホヤを食べたことが有りますか。三陸や北海道が産地ですが、今は全国区入りして、各地のスーパーや鮮魚店など、至る所で手に入るんじゃないですかね。
初めて口にした人は、あの、大変印象深い味と香りに、多少 戸惑ったことでしょう。 私の回りでも、思わず口から吐き出した人が、何人か居ます。 でもその人も、結局今ではやみつきになっています。
そうです、おいしいんですよ。

私が昔、行きつけだった居酒屋の亭主が、こんなことを言っていました。

人間の味覚と言うのは、甘い、渋い、すっぱい等、5つだったか6つ有る。
ホヤは、この味全部を持っている――。

――― ふーむ、なるほどなるほど。それで、

良い酒(日本酒)と言うのは、この味が全然無いもの。つまり「水の如し」と言うのが一番良い酒だ。だから、酒の肴に、ホヤは最適なんだ――。

理屈に合っているのかどうか分かりませんが、妙に納得した覚えが有ります。
ともあれ、冬は牡蠣にナマコ、夏はホヤ、日本は酒飲みには良い国です。

■ ヘルマプロダイト

先ずは取っ掛かりでで、ホヤの味覚のユニークさに触れました。
次にホヤの生態のユニークさから話に入ります。

ホヤは雌雄同体です。
雌雄同体というのは、ひとつの個体に、メス、オス両方の機能を 備えている生物で、両性具有とも言います。
ユニーク、と言いましたが、それは人間を基準にした話で、こう言う生物は結構居ます。
フジツボ、カイメン、ミミズ、ヒル、カタツムリ、等
何より植物の大半は雌雄同体です。花には雌しべと雄しべが 同居しています。

雌雄同体のことを、英語で「ヘルマプロダイト」と言うそうです。
ギリシャ神話の最もハンサムな男の神、ヘルメス、同じく美と愛の女神、アプロデイテ(ヴィーナス)の間に生まれた美少年、ヘルマプロダイトに恋をしたニンフのサルマキスが、一つの身体になりたいと神に祈って、ひとつの 体に合わさった、と言うことです。
ギリシャ・ローマ時代は、男性、女性双方の美を合わせ持った 両性具有は理想美とされ、当時の遺跡からはヘルマプロダイトの彫刻が 幾つも出土されるそうです。
花は、確かにヘルマプロダイトの名に相応しいと言えるでしょうが、 ミミズだのヒルだのはどうもこの美しい寓話のイメージからは程遠い。

所で、花は雌しべ、雄しべ両方を備えている訳ですが、自分の雄しべの花粉で 受粉する訳では有りません。まれにそう言うことが有って、自家受粉と言いますが、その場合まともな 実は出来ません。植物は、自家受粉を避ける色々な仕組みを持っています。雌しべ、雄しべの成熟期をずらすとか、突端と奥、と言う具合に位置を 離すとか。
動物も同じく両方備えていると言っても、それを使って自分自身で 完結する訳では有りません。

若し、人間でこんなことが出来たら都合良いでしょうね。ストーカーとか、レイプ、やきもち等、男女に絡むおぞましい話、 ややこしい話の大半が解決するかも知れない。その前に自分自身で完了してしまう訳ですからね。
でも、話としてはどちらの方がおぞましいか…。 一日中一人で部屋を閉め切って、その中でのた打ち回っている人が出てくるかも。
………ともかくこの話は終わりにして 次へ。

■ 雌雄同体が存在する理由

何故雌雄同体が存在するか、上記の生物を見て考えると大体分かります。
地面に固定生活をしている植物は当然として、ホヤ、フジツボの様に動物でも固着生活をしているもの、カタツムリの様に移動してもその範囲が狭いもの。
その中で配偶相手を見つけるのは中々容易なことでは有りません。 その上、雌、雄に分かれていたら、やっと巡り合えたとしても確立は半分です。
身体の作りが単純で、両方備えるのにそれほどコストがかからず、同時に上記の様に移動性の乏しい生物にとって、雌雄同体は好都合なのでしょう。兎も角自分以外、全て配偶相手となり得る訳です。

性の多様性と性の不思議

性の多様性の一例として、雌雄同体を見てみました。我々は無意識のうちに自分(人間)中心に、自分を基準に考えてしまう癖が有ります。しかし雌雄同体を見ても分かる通り、地球上には多様な性、多様な生物がいます。性を持たない生物もザラに存在します。
性の起源、性の目的を考えて行く上で、自分たち人間だけでなく幅広い目で、生物全体を眺めて行くことが求められます。なおこれは「性」に限ったことでは無いでしょうが。

■ 性の不思議

book.jpg前項記述の中心的な所、そしてこれからの記述する内容は、実はある本からの出典です。

「オスとメス 性の不思議」長谷川真理子著、講談社現代新書発行、600円

私がこの本を最初に読んだのはもう随分昔ですが、この本のお陰で、一時「性」に没頭したことが有ります。
と言っても風俗店の回数券を買ったとか、渋谷でナンパに励んだとか、と言う ことでは有りません。
最寄の図書館で、関連する本を読み漁りました。お陰で今では、いっぱしの「セックス評論家」です。

大体我々、男の子はこう言うことにとても興味が有ります。何かに一生懸命になるとき、その動機は大抵、女性にもてたい為です。
私の一番の贔屓筋の落語家、今は無き桂枝雀が、落語の中で、ある著名な人の言葉を引き合いに出しながら次のようなことを言っていたのを聞いて、激しく共感したものです。

「私がこんなことをやっているのは、勿論それが好きだ、と言うことも有るが、しかしそれだけじゃない、これをやることによって、やっぱりどこか、女の子にもてたい、そう言うところが有るんだ」って。

「性」 は上手に使えば、自分を高め、生きる力になります。やはり「性は生」なのですね。
この本を読むと、興味を持っていたそれら性について、実は 殆ど知らなかったことに気がつかされます。

※ このサイトの記述は、上記「オスとメス 性の不思議」がきっかけになっています。 しかしその内容を忠実になぞったと言うものでも有りません。私の勝手な思い込みも多々有ります。間違っている部分は全てサイト管理人である私の責任です。 なおこの本を含め書店には「性」について、その起源、目的、等、進化生物学の立場から「真面目に」論じた本が結構あります。手にとって読まれることをお勧めします。

■ 性の目的、起源

あなたは、次の質問に「科学的に」答えられますか。

  1.    男(オス)と女(メス)の違いを述べよ。
    オスとメスは何処が違って、何が別だからオス、メスと区別するのか。
  2. 何故、オスとメスの二種類の性が有るのか。
    或いは何故、二種類しか無いのか。色々の種類の性が有って、バリエーション 豊かな性を楽しんだって良いじゃないか。
  3. 大方の動物を見ると(植物は大半雌雄同体)、オスとメスの数(性比)は大体 同じになっているが、それは何故か。オスなんかこんなにいっぱい必要無いじゃないか。。
  4. そもそも、性は何の為に有るのか。

こんなことは、余りに当たり前で、特別に問題意識を持ったことも、考えたことも無いことでした。でも、こんなことにもきちんとした科学的な説明が出来るんですね。
そして又、このオスとメスの違いからくる繁殖戦略の違い、配偶関係の在り方が、今の人間社会の有り方に大きく反映しています。
後ほど詳述しますが、ホモ・エルガスター(ホモ・エレクトス)の時代に、初めてヒトは一夫一妻性への道を歩み始めます。そしてそのことが今の社会の繁栄の基礎にもなっています。

ここでは取りあえず、この中で一番の問題、「何故、性が有るのか」を、「林檎倶楽部」的解釈も加えながら紹介します。
あなたは、「性」はどうして始まって、その目的は何だと思いますか?

答えの半分を言います。「子孫を残す為」これは間違いです。
本当の答え(だと、現在思われている説)は次回以降。



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